なぜか不思議なことですが、

学生時代の友人

 私の友人には変わったヤツが数多く集まってきます(人のことが言えるのか?)。友人の基原君は、風貌も変わっていて、口癖は「ペクッ」。学生の頃みんなで飲んでいると、ひどく酔っぱらった彼は「ボク帰る」と言ってヨタヨタと歩き、出口付近で壁に激突。すると掛け時計が衝撃で落下し、彼の頭を直撃。心配で、みんな急いで駆け寄ると裏返った声で「ペッ、ペックペック、ペクッ……だいじょ~ぶだよ~ん」と言いながら白目になり、泡をブクブクと吹き出し気を失いました。

 酒を飲んで迷惑をかける友達も、たくさんいます。これも学生時代の話ですが、友人の学田君と夜遅くまで天神町(てんじんのちょう)の屋台で飲んでいました。そのとき何が気に障ったのか「オレ、帰る」と怒り出し「タクシーを呼ぼうか?」の声を無視し「走って帰る」と言い残して暗闇に消えました。彼の自宅までは20km以上はあり「大丈夫かなぁ」誰かがポツリとつぶやきました。「だいぶ飲んでたぞ」心配になって彼が消えた方向に歩いて行くと、道に人だかりが……。その真ん中に彼は倒れ込み、幸せそうに眠っていたのでした。

 最近は天神町も都会化が進み、人情味が薄くなってきました。ある朝、友人の雅中君が目覚めると、そこにはたくさんの人たちの歩く足がありました。見上げるとグランドホテルがそびえたっていました。今は、道で寝ていても誰も気に留めないのです。ちなみに、彼は背広の汚れをパンパンと払い、そのまま出社したそうです。

 彼の後輩にも酒癖が悪いヤツがいます。おとなしい後輩で、元気づけようと飲みに誘ったそうです。仕事のことでいろいろと悩んでいた彼は、先輩のアドバイスを受けて悩みも解決。、多弁になり、頭をしきりに振り「先輩、ありがとうございます……ボクは何でもできそうな気分です」を繰り返します。「じゃあ、二次会に行こう」。繁華街を歩く後輩は「ありがとう」「何でもできる」を連呼。急に静かになり不思議に思って振り返ると、後輩はうれしそうに道の真中で服を一枚ずつキチンとたたみながらパンツ1枚になり、踊りだす。雅中君は、お巡りさんにペコペコと頭を下げ、何とか許してもらったそうです。

 酒は怖いものです。学生時代、ホテル屋上のビアガーデンで学園祭の打ち上げを行いました。漫画研究会はおとなしいヤツが多く、静かなカンパイの音頭で宴会が始まりました。この日は飲み放題。大ジョッキでビールをがぶ飲みしてトイレとサーバーを往復するヤツ。大量のおつまみを持ってくるヤツ。たまに見かける風景です。そのうち、酔っ会場を走り回るヤツ。乾杯でジョッキを割ってしまうヤツ。しきりにビールを撒きだすヤツ。他の客からクレームがつき始めます。たまりかねたホテル側は、ガードマンがスクラムを組み私たちをエレベーターに追い込み、排除にかかります。「客に何をする」と叫ぶ先輩たち。悪いのはこちらです。

 エレベーターに押し込まれ1階に着くと、ここでも騒ぎが起きています。K先輩とI先輩が殴り合いの喧嘩をしているのです。「オレの女を返せ」「何を言う、オレの彼女だ」。痴話げんかです。2人はホテルのレストラン横の噴水のある池の中でびしょ濡れになって罵り合っています。2か月前にも大学近くの焼き鳥屋の前で大喧嘩をし、石を投げ合い、店の看板を壊して20万円の弁償をした2人です。争いの原因となる彼女は漫研の部員で、お世辞にも可愛いとは言えないヒステリータイプの女です。

 やっと2人を抑えると、別の方向から「キャー」という声。別の先輩が騒ぎを起こしているのです。日頃は「オレはナイーブだ」や「きれい好きで神経質」と自分の性質を分析している先輩。あろうことか繁華街の大通りの真ん中でポコチンを出し、小便をしながら歩いているではありませんか。用を足し終えブルブルっと身震いした先輩は、湯気の上がる小便の上に倒れ込み動かなくなりました。もちろん放ったらかして、逃げて帰りました。

 私も酒癖は良くはありませんが……、それでも漫研の先輩よりはマシです。ちなみに、酔うと明るくなって歌って踊るタイプです。他人に迷惑をかけてはいない……つもりです。

(平成3年2月(下)に続く)

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