ぎゃっ、ウチの広報紙が”特選”になってる…?

直属の上司だけ喜ばなかった

 「ぎゃっ、ウチの広報紙が”特選”になっているって…?」と驚いたのは1月下旬。県から、それらしき電話を受けたのです。「いや、まだ決定はしていないんですが、オタクの広報紙が市町村Ⅰ部で県の特選になる可能性があるんで、全国大会に出品のため、この号を10部とその前・後月号それぞれ5部ずつ…」うーむ。可能性?電話によると決定したというワケではないらしいが、可能性という言葉が妙に引っかかる。以前、毘沙門町の田仁さんが写真で特選になったときに県から受けた連絡には「可能性」という言葉はなかったらしい。「きっと、可能性のある他の町村も同じような連絡を受けたに違いない…」そう思いました。

 しかし「待てよ。昨年、入選1席に選ばれたときには何も連絡がなかったし……、もしかすると…」「いや、出品した広報紙が特選になるなんて考えてなかったし…」頭の中で「待てよ…」「いやいや…」「しかしなァ…」「やっぱり…」という単語が飛び交います。結局「課長と係長にだけ電話の内容を伝え、他には、まだ黙っておこう」と決めたのです。もちろん私は口が堅いので、誰かに言いたくてウズウズしておりました。…で、ポロッと同じ課の女の子に言ってしまったのです(僕は、なんて口が堅いんだろう…ううっ)。「いやぁ、おめでとう」「へーっ、すごォ~い」という黄色い声に「言ってしまった」という後悔と「ううん…もっと褒めて」という快感が交差し、自己矛盾に打ち震えていました。

 「こりゃあ、お祝いしなくちゃねー」「わはっ、わはっ、イイよ別にィ、まだ決まったわけじゃないし、何といっても可能性だから…(選ばれなかったら……不安もよぎる)」「そんなことはない。きっと内示よ、県からの…」「そうかなあ?」…で、あっという間に職場内に広まり、まだ決定もしていないのに役場の日本酒好きで組織する「花見の会」でお祝いをしてくれることになりました。もし、特選じゃなかったら泰平が費用をすべて出すという条件で…。「おめでとう…」「よかったね…」「頑張ったもんね…」「次は結婚だねえ…」「俺はお金を払いたくないので、特選じゃないほうがうれしいぞ…」というよな、様々な祝福を受けながら酒を飲み、1次会で酔いつぶれてしまいました。

 数日後、各新聞に「曼荼羅町、広報紙(町村Ⅰ部)で県特選」という記事が載りました。新聞を見た同僚たちは「よかったなあ」「おめでとう」と祝福し、新聞を見なかった同僚たちも「おっ、泰平の結婚がついに決まったか?」と勘違いし「おめでとう」と祝福してくれました。電話やハガキなどで、いろんな町の広報担当からも祝福の言葉をいただき、猛烈に感激しました。ううっ「あがりとう」(感激でことばにならない)。

 あれから3週間。「特選」もすっかり忘れ去られ、もう過去の出来事。誰も何も褒めてくれないし、言ってもくれません。時々、思い出したように「あれ?泰平、結婚したんじゃなかったの?」というズレた同僚がいるくらいです。それどころか消防団の集まりのときに同級生が「泰平、おまえ新聞に載ったげなね(らしいね)?」“褒めて”オーラを出しながら「うん、広報の…」と言い出す前に「何か悪いことしたんじゃない?婦女暴行とか、幼女にイタズラとか?」と言われる始末です。(はい)

(平成4年3月号(中)に続く)

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