意地悪ばばあ、富子しゃん

迂闊に乗れないマルミ婆ァさんの言葉

 うら広報のニューキャラクター富子(祖母)について書くことにしよう。そう、3月号のうら広報・追伸で登場した、毘沙門町3大やかまし婆さんのメンバーの一人です。意外と反響が大きく、再登場となります。その前に、残りの2人の現況をご紹介しましょう。

 先日、メンバーのオミヤさんから電話がありました。車いす生活に移ったオミヤさんでしたが、日ごろの嫁いびりで鍛えた根性の強さが功を奏し、乳母車を使用すれば歩けるようにまで回復したとか…。電話を切った富子は「あ~あ、オミヤさんところも大変だねぇ。年寄りがあんまり我がままを言うもんじゃないよ」(自分は、どうだ)

 この前は日曜日、居間でゴロリと横になってテレビを観ていると(他の家族は出かけていて、私は1人で留守番だった)コポコポとお茶をつぐ音。驚いて振り返ると、もう一人のメンバー、マルミさんがいつの間にか上がり込み、勝手にお茶を飲んでおりました。「楽ちゃん、今日は誰もいないねぇ」「は、はあ、みんな出かけているんですよ」「ねえ、さっき茶棚の中を見たけど(いつの間に)羊羹を切るから包丁を持ってきて」「え、ええ」「しかし、康子さん(母である)も大変ねぇ。あんな、我がまま婆ァさん(富子のこと)がいたんじゃ……早く死ねばいいのにねぇ…そう思わない?」

 こういうとき、迂闊に「そうですねェ」などと応えようものなら、針小棒大にバラされる怖れがある。「いやぁ、そんなことはないですよ」「楽ちゃんは優しいからねぇ…ウチの孫娘、嫁にもらわんね?」ここの孫娘、意外と可愛いのだが性格が悪い「ははは、いやぁー、ボクにはもったいないお嬢さんですから…(無難な応え)」「そうね、ウチの孫、月収50万円以上稼いでいるから(いかがわしい健康食品をマルミ婆ァさんと一緒に売っている。売り方は3月号追伸に書いたような強引なもの)一流品ばかり身につけたがってねぇ…(そうは見えないが)まあ、あなたじゃ向かないかもねえ」(こ、こ、このクソ婆ァ)

 そこへ祖母・富子が帰ってきた「あら、マルミさん来とったと?」「はは、富子さんも元気そうで…やっぱりウチの健康食品を食べているから顔色もいいわ(さっき「早く死ねばいいのに」と言っていたのは誰?)「そんなことないのよ、最近は心臓が苦しいときがあってね」(10年ほど前、精密検査で「100歳まで大丈夫」と九州大学の医師を驚かせていたはずだが…)その言葉に待ってましたとばかり「富子さん、新発売の健康食品が出たとよ、心臓によかとよ」「えっ」しまったと思ったときはすでに遅く、10分後には契約書にサインをしていた祖母。マルミさんは私にも、養毛剤やカツラをゴンゴン勧めてきたが、のってこないので「男は見かけよ」と捨てゼリフを残し帰っていきました。

 マルミさんが帰った後、祖母の富子が「あっちの孫娘、あんまり評判がよくないバイ。婆ァさんが婆ァさんやろうが、間違っても騙されるんじゃなかとバイ」(何のこっちゃ)その夜、祖母は、心臓にいい健康食品を「疲れが取れる」と効能を変えて父に売りつけようとしていた。祖母の後ろ姿がもの哀しかったのは、言うまでもありません。

 さて、祖母・富子の近況だが、先日、職場の飲み会で少し遅く帰ると、テレビをつけっぱなしで眠っていました。「たらいま、早く寝たほうがイイよ(優しい孫)」「あーっ!!また飲んで来たろ」「うん少し」「あーれあれ、顔が腐れブッカンのごと(腐った柿のように)真っ赤だし、あーっ酒臭か」(そんなに飲んでないつもりだが…)「もう、寝る」(逃げるように自分の部屋に舞い戻る私)早々に電気を消して布団にもぐり込み、うつらうつらとし始めたころ、祖母の意地悪が始まった。真夜中、隣の部屋の大掃除が始まったのです。

 ガタン、ガチャ、ゴトッ…。「ああ、うるさい、電気消して」うるさくて目が覚めた、明るくて眠れない、という苦情をよそに「散らかっとうもん」(ぶおおおおお…掃除機の音)「あああああ」「気にせんで早く眠んしゃい。明日も仕事やろーが」「あああああ」涼しげな顔で、午前2時過ぎまで部屋の掃除は続きました。

 さて、気がつけばもう8ページ。今月号はあんまり書くことがないなあと思っていたんですが…。もうすぐゴールデンウィークです。何か面白いお話でもありましたら、お便りをください。5月こそはイイコトがありますように……。

まんだら町の色男:泰平 楽 (1992年4月25日(木))

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