想いはあるが、経営が厳しくなる

極めるほどに楽しくなくなるような気がする

 先日、和醸良酒探究会に参加しました。おいしい酒を飲む会です。この日は、一般的においしいと言われている地酒(比較の基準)として「越の白瀧(雪漫々タイプの酒)」が出された。並んだ酒は8銘柄以上。(1)「千代の園:原酒」(平成3年度:新酒)と(平成2年度:1年間冷蔵保存)(2)「神亀:純米」(にごり酒:発砲タイプ)と(一般の純米酒)(3)「久保田(万寿):大吟醸」(この日一番高い酒:5,000円/4号)(4)「四季桜:吟醸」(5)「瑞穂菊:大吟醸」(6)「栄光富士:大吟醸」そのほか、「富貴の誉:純米しずく」や「銀盤」などなど。

※よくよく見ると、ブログ「和醸良酒探究会」の項の資料3)の会合でした。

 (3)と(6)以外は、とてもおいしかった。((3)と(6)については、かなり人工的な処理(炭素ろ過、ヤコマン:つけ香)が感じられ、おいしいのはおいしいのだが不自然さがある)(5)については少々古くなっていたこともあり、ヒネ香が出ていたもののお気に入りの逸品であった。(1)の新酒は新酒にありがちなフルーティーな香りが楽しめ、よく熟れたビワを連想させた。冷蔵保存酒は香りが味に変わり、枯れた味が楽しめた。(4)はクイクイと飲める酒。とても飲みやすい。

 今回「おおっ、スゲェ」と思ったのは(2)。埼玉の酒である。食中酒をコンセプトにしていることもあり“冷や”で飲んだらまずい酒。アミノ酸の含有量が少ない酒で、キレは驚くほど良い。脂分の多い食事に合い、この日はエビとホタテの炒め物にカンをつけて飲んだ。とてもいい。日本酒版の紹興酒で、口の中の脂をスッと流してくれる。とてもいい。

 いろんな酒を味わった後は、雑談。この日の参加者のほとんどが岡福市と津唐市の人。ビルの設計士や写真家、美容師などクリエイティブな業種の人やかまぼこ店の店主など、味にうるさいクセ者ばかり。ちなみに前記の評価も彼らの受け売りで、個人的にはどれもおいしかったというのが正直なところ。特に、かまぼこ店の店主の話にはうならされた。「味の素を入れないと売れない話」「合成保存料を入れないと売れない話」「自分の子どもも化学調味料の影響で味音痴であるという話」「思いと商売は相反する話」などなど

 また、この日飛び入りで参加した酒蔵の主人は、こうボヤいていた。「高い酒であろうと安い酒であろうと、1本当たりの収益は同じ」「高いものは造るのに苦労するので、安いものを造った方が楽」「すべてを純米酒にしたいという思いはあるが、経営ができなくなる」「酔うためだけに飲む人がいる以上、混ぜ物いっぱいの安酒も作らざるを得ない」などなど……みんな苦労しているんですね。

(平成4年6月号(四)に続く)

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