望むと望まざるとにかかわらず進む、ハゲ

カツラのハードルは極めて高い

 頭が薄いと言えば、ルー大柴。最近、アデランスのライブニューのCMに出ている。「俺がイイと思ったから、おまえもしろぉ…」「ライブニューでトゥゲザーしようぜ!!」「べリー、ベリー、ナチュラル」ふんっ。胸に突き刺さってくるぜ。

 先日、友人で同僚の文矢氏と喫茶店で、これに類する話題となった。もちろん文矢氏も髪に悩みを持つ男です。(時々「俺は結婚してるからいいけど、泰平、オマエどーするの?」と問いかけてくる。一瞬、殴り倒したくなるが、彼のほうが薄い)

 文矢氏が「オレ、ライブニューにしようかなァ」とつぶやいた。それに対し「でも…(少し口ごもる)カツラってすぐバレるぜ。周囲の人たちの笑い声をかみ殺す風景が目に浮かぶぜ」と言ってしまった。文矢氏は「別にいいじゃん(おい、横浜の人間かよ?)。オレはすでに子供もいるし、笑われたって別に……、1年も経てば、誰も何も言わなくなるさ」と強気の回答。「ふーん、考えようによっちゃあそうかもしれんなァ」と納得する私。

 白髪頭はロマンスグレーなどと言われ、年相応の落ち着いた渋くてカッコよいイメージがある。それに対し、ハゲ頭は台湾ハゲやスダレハゲなど形状が想像できる区分で呼ばれ、胸の中をえぐられるような辛さがある。英語でスキンヘッドと言ってもカッコよさよりもやくざなイメージが強く、関西では所詮「ハゲ散らかしている」状態でしかない。どちらにしても、本人が望むと望まざるとに関わらず、時間の経過とともにハゲは進むのである。

 先日、先輩の良林氏とカツラについて話をした。彼の髪はフサフサ、関口宏のように一部白髪になっている。しかし、父親がハゲているためカロヤンハイで対策を講じているとのこと。「泰平、いいんじゃない。メガネくらいの軽い気持ちでカツラをかぶるのは…」「そうですねェ、軽い気持ちでねェ…でも、メガネと違ってファッションとしてカツラをかぶる人はいませんよね」と、後輩の崇上が「ファッションじゃなく、ハゲ隠しですよ」「うるさい黙れ」良林氏が話を続けた「うーん、確かにファッションでカツラというのは、中世ヨーロッパ以降はあまり聞いたことがないなァ」

 「そうですよ、入れ歯や補聴器のように日常生活の補装具と違いカツラは見かけ、要はハゲ隠しのためので、しっかり”老い”を感じさせるものだし、カツラだと世間にバレるとカッコ悪いですよね」と泰平が突っ込む。「うーん、確かに入れ歯を装着するのと近い感覚はあるなァ」妙に納得する良林さん。崇上が「頭皮が硬くなったり毛穴に脂が溜まると、ふふ泰平さん…」「うるさい、あっちに行け」良林氏は心配そうに「どうする泰平。ハゲる前に結婚した方がいいぞ」「う~ん、でもまだライブニューをつけるほどはイッてないと思うし…」「はは、もう地肌が見え始めていますよ」と崇上。「だーっ、うるせえ」

 「オレの嫁さんの友達でも紹介しようか?性格だけはイイ娘だよ」「性格だけですか?(贅沢が言える立場?)いや最近、どうでもよくなってきてるんですよ、結婚。何か面倒臭くて…」と崇上が「だめですよ、エイズとか流行ってるから結婚したほうがイイですよ。中洲も危ないですよ」「あのな、お前らが誤解を招くことを言うのも婚期を逃す原因の一つなんだぞ」「えっ誤解?でも光野さんが、泰平さんの下半身は乱れまくってユルユルだって言ってましたよ」「クソ、光野の野郎」「まあ、イイじゃないか。泰平がホモだってウワサよりゃマシだ」これ以上書くと、性格も暗くなりそうなのでやめることにする。

(平成4年6月号(参)に続く)

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