テレビに出ました!!笑うしかありません。

テレビに出るのは、恥ずかしい

 「曼荼羅町」が「曼荼羅市」に名称を改め、もうすぐ1か月。10月はイベント続きの超忙しさ。泉大市さん、ウラ広報が遅くなってメンゴ。と気がつけば、もうすぐ11月の声が「コケコッコ」。季節は、もう秋です。朝夕もめっきりと肌寒くなり、人恋しさが募る季節になってしまいました。性…いや、食欲の秋。山々が赤や黄色に化粧を始めれば、栗だのマツタケだのが、海ではサバやアジ、サンマのまんま。もっと寒が締まればフグが…。ぐふふっ、秋はイイ。マツタケやフグはまだ食卓には姿を見せないものの(昨年も、一昨年も見てない)、いやいや、栗おこわでもサンマの塩焼きでも、秋はおいしい。

 炊きたての新米にジュージュー焼きたてのサンマ、横には大根おろし。いい。サンマには焼酎が合う。苦い内臓を口に放り込み、お湯割りにカボスを絞った焼酎で流し込む。いいネぇ。割烹着を着た若奥さんなんかが「今度は、日本酒(おさけ)をつけましょうか?」なんて言ってくれりゃあ、もう最高。鼻水が出ちゃうもんね。秋は人恋しさが募ります。

 んで、もうちょっと寒くなると、デ~ンと登場するのが「こたつ」。窓の外は木枯し紋次郎が吹いてて、熟した柿が1個だけ木の枝に…。こたつの上にはカゴいっぱいのミカン。お湯のみには番茶が注いであって、湯気がポッカリ出ていたりして…。ふふっ、テレビは毒にも薬にもならないお笑い番組。ネコは丸くなって寝ている。イイねぇ。でもって、一緒に若いお姉ちゃんがベージュ色のセーターなんか着て側に座ってて、「お昼は、鍋焼きうどんでもしようか?」なんて言われたら、もう…アットホーム。もう…こたつの中で、オナラなんかしちゃうもんね。(妄想の世界をさまよっております…)

 10月の、市制施行業務と関連業務という激務も過ぎ、その間に祖父が亡くなり、係長も亡く…おっと、入院してしまい、ひとつの区切りを越えたような今日この頃…。プーッ、プーッと目の前の電話が鳴る。最近の電話はリンリンと鳴らない。我が家の電話はピロロロロと鳴る。まあ、それはどうでもいいとして…受話器を取ると若い女性の声(ちょっとうれしい…)「もしもし、KCBテレビのモーニング・ニングの担当のですが」(ちぇっ、マスコミか…)「はいはい、広報担当の泰平です」「あの、今日“みんな登場”の番組収録でそちらの商店街に伺うんですが…出ていただけませんか?テレビに…」

 「えっ、出るんですか?テレビ?勘弁してくださいよぉ…わたしゃテレビ向きの顔じゃないし…」と一度は断ったものの押しには弱く、若い娘に押されるといとも簡単に崩れ落ちてしまう私は32歳。結局、職場の若手4人を引き連れて出演することになりました。そうです、その中にはバカの光野もいます。普段は先輩に遠慮することなく辛辣なことを言う光野も、登場が近づくにつれ無口になります。「あのぉ、役場(もう役所だが…)の方がトリですから、パーッと盛り上げてください」というディレクターの声などほとんど聞こえちゃあいない。かく言う私も心の臓が早鐘のように打ち、返事もあいまい。

 「何とかしなきゃ」の言葉が頭ん中でグルグル回ります。「み、光野、キミしかいない(ベッセンⅮのCM)」。光野の表情は硬く「うっ、いや」としか答えない。光野以外にも村前や神大、本浜もいるが、出番が近づくにつれ、みんな無口に……。遺憾、これは遺憾。舞台に上がると、光野は石になっています。進行はローカル局では有名な徳安レイコさん。「市になって、やっぱり職場の雰囲気とか変わったでしょう?」の問いに「いえ、別に…」(盛り上げろよ光野)「あのぉ、奥さんに一言!!」のフリに「別に、イイですよ…」(何を言うとる、場をシラケさせるのはよせ!!)光野の表情が、だんだん怖くなっていきます。

 すると、不意にマイクがこちらに向けられました。「そこの、お父さん」「へっ?ははは、私、まだ独身なんスよ。はっはっ、ははは」(遺憾、声が上ずっている)「あれまあ、独身なんですか?いや、それはどうもスミマセン」(別に謝らんでいい、妙に謝られると悪いこと言ったみたいぢゃないか)「いい人そうなのにねぇ」と徳安アナ。余計なコト言うなよと思いつつ「はは、そうなんですよ」と応える。「じゃあ、マイクに向かってお嫁さん募集を!」「ははは、誰かお嫁さんになってください」(何を言わされている。おまけに会場からの笑いもないじゃないか…遺憾、これは、みじめだ)「ははは……」笑うしかない。

 さらに追い打ちがかかる。「きっとお見合いなんかされたんでしょ?ずいぶん」(そんなこと訊くな、馬鹿)「はあ、もう両手では数えきれないくらい断られちゃって……ははは」(オレは、何を応えている…まんだら市のPRのために出てるんだろ。恥の上塗りをしてどーする)「はっはーっ、ほとんど101回目のプロポーズですね」「ははは…」(「僕は死にましぇん」と叫べばウケるのかな?など、頭の隅をよぎる)こうなったらもう、やけくそ「エクボが可愛いですね」の問いに「うふっ、よく、そー言われま~す」「どんな女性が理想なんですか?」の問いに「うふっ、うふふふ」と、要領を得ん応え…。

 けっ……テレビなんか、テレビなんか嫌いだ!!出なきゃよかった。出なきゃよかった。死して屍拾う者なし。覆水盆に返らず。会場からの冷笑を背に受け(顔はつくり笑顔で固まっている)舞台から降りました。

(平成4年11月号(弐)に続く)

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