大切に扱ってもらえない養子さんも多いんだ…

 さて最近のことですが、どーも人様の「ちょっとした幸福」が気になってしょうがない。赤ん坊を抱っこした父親。えぱーえぱした(博多弁だよ)笑顔が憎たらしいほど幸せそうだ。2~3歳の子どもをはさみ手をつないで散歩する若夫婦。こんちくしょう…である。先日の消防団の班長会での飲み会のとき、1つ上の先輩が説教をたれ始めた。この人、2年ほど前に結婚したデザイナーで、とても子煩悩な人である。「泰平君、君は独身だそうだね」「はあ、なかなか縁がなくて…」「なるだけ早く決めたほうがよかバイ…子どもは、もう、可愛かバイ」「ええ、皆さんそうおっしゃいますねぇ」

 話は続く…「うん、嫁さんより子ども…子どもがいるからこそ、仕事も頑張ろうって思うんだ」「はぁ、そうですか…うらやましいですねェ」「うーん、まだ1歳にもならないが、夜遅く帰っても、まず気になるのは子どもだ」「ほーほー」「泰平君、早く結婚を決めたほうがよかバイ」「はあ、でも養子の話ばかりで…どうも養子というのは気持的にダメなんですよ」「なに、養子?うーん、それは考えたほうがイイなぁ」「よく言われるんですけど、今は昔と違う、今の養子は大切にされるからってねぇ」「君、石渡君と同級生だったねぇ」「小学校のときは、よく遊んでいましたが…」

 石渡君の話になった…「あいつ…養子に行って可哀相バイ」石渡君は、惚れて、惚れて、惚れぬいた(何か、演歌の歌詞みたい)彼女と結婚し、養子になったのである。奥さんの家は父母も祖父母もともに元気でピンピンしており、おまけに小姑までいる農家である。彼は大手電機メーカーに勤め、IC工場の3交代制で朝方までのシフトに組まれて働いている。普通なら、朝、家に帰り疲れた体を布団の中で休めるところである。しかし彼は農家の養子、帰宅すると作業服に着替え、田畑で働くのである。それが好きならいいのだが、従順な彼はイヤイヤ働き、最近は人づきあいさえ悪くなったとのことである。

 最近は、日常生活での行動チェックも厳しいらしく、かなりのレベルで行動が制限されているという。すでに愛の冷めた奥さんが両親とぐるになって彼をこき使っているらしい。酒を飲んでストレスを発散することもできず、近所の人たちも「せっかく来てくれた養子さんを、あんなにコキ使って…」とか「いつか、あの養子さん過労死するバイ」とのうわさが絶えないとか…。真偽のことはわからないが「養子は、よーく考えて決めんと、大変なことになるぞ…大切にしてもらえない養子さんも多いんだ」と、一つ年上の先輩の力説は続いたのである。

 養子といえば3大うるさ婆ァのマルミさんの亭主・金三郎氏。先日マルミさんが出版したと、祖母・富子を訪ねてきた。マルミさんは文化人である。祖母は後で感想を聞かれるので懸命に読んではいたが、イヤになり、母・康子に代読させている。母の感想が富子の感想になることは言うまでもない。その日の午前中、県の広報(どうやら美術館)から、亭主・金三郎さんの取材にやってきたとのこと。カメラマンが何枚も写真を撮り「すみません、ご主人の若い頃の写真はありませんか」と聞かれたマルミさん。「この人は、若いころから丸ハゲだったので、今の写真と一緒ですバイ」やはり、養子は辛そうである。

 えーと、10年ほど前に組合の機関紙に書いた原稿が出てきたので、最後に紹介します。いま読み返しても、私自身の成長のなさに、ただただ、あきれるばかりです。ううっ。じゃあ、何かあったらお便りください。

(平成5年8月号(10年前の寄稿文)に続く)

10年間の成長ぶりに唖然となりました  泰平 楽(1993年7月27日)

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