法務局に行きたくてたまらない日吉さん

 先日10月号の校正をしていると、賀古町の野中さんがひょっこりと遊びに来た。「福井に行ったの?」野中さんは、私にとっては広報の神様である。福井(特に滋賀の夜)の話をし、新潟の八十嵐さんから「このひどさは、岡福県の県民性だ」と言われたことなどを報告しました。(この場合、僕はおとなしくしていたんですが、珂那川町の志浦君がねぇ…と、すべて志浦君のせいにする泰平であった)。「あれ…やったの?ムチ?」野中さんは遠くを見るような目で言った。「はい、やられましたよ。次の日、背中にミミズ腫れがくっきり浮き出て困りましたよ」野中さんはうれしそうに頷く。

 「あれは…熊本の大会から始まってねぇ…で、唐辛子の金玉ぬりぬりは?」と話題を深堀する野中さん。「今回は、やらなかったと思いますよ。少なくとも僕らが帰るまでは…」野中さんは、さらにうれしそうに「あれは、止めたほうがいいよ。クセになるから、やられたヤツが必ず仕返しをしようとするから収拾がつかなくなるし…塗られたら塗られたで、時間が経つにしたがって金玉が燃えるように熱くなって…最終的にはトイレに籠って金玉を冷やすヤツ、脂汗を流しながら無口になるヤツばかりになるから…あれは、止めたほうがいい」う~ん、最初に始めたヤツの言う言葉ではないと思うが…。

 9月は野中さんをはじめ、野北町の林光君など広報担当者とよくお会いする月でした。林光君とは、特集記事の関係で「空き缶ポイ捨て禁止条例」を全国に先駆けて制定した野北町の取材に出かけ会いました。当日は激しい雨で、何とか野北町までたどり着きました。「こんにちは」「えっおっ、いっやぁー(久米留弁?)泰平さん久しぶり」暖かく対応してくれる林光君。しかし彼の顔を見ても人恋しさの解消にはならない。ひととおり話を聞かせてもらい、記事を補強するため公民館で人物取材。適当な人(ターゲットは高齢の男性)が来るのを待ちますが雨がひどく、誰も来ない。しかたなく街中へ…。

 その途中「法務局に行く…」という男性高齢者の日吉さんを捕まえ、いろいろとお話を聞かせてもらいました。「罰則つきの条例ができて1年経ちますが、何か変化はありましたか?」「うーん、だれもポイ捨てをせんようになったなァ…じゃあ法務局に行くから」「ちょっと待って…もう少しお話を聞かせてください。えーと、皆さんのポイ捨てに対する意識についてですが、日吉さんやご家族、ご近所の皆さんなど何か変わりましたか?」「そうねぇ、自分の町だから自分たちで考えなきゃっていう意識、美化意識は芽生えたようだねぇ…じゃあ法務局に行くから」

 「す、すみません、もう少し聞かせてください。住民の反応はどうですか?」「最初はいろいろ言う人もいたが、テレビなんかで町も有名になったし、今はほとんどの人がこの条例をつくってよかったと思っているよ…じゃあ、法務局へ…」法務局に行きたくてたまらない日吉さんであったが、いくつかの質問に丁寧に答えていただき、写真も撮りました。「ありがとうございました」あんなに「法務局」を繰り返した日吉さんでしたが「えっ、写真?撮るの?わしの…えっ、送ってくれるの?えーと、送り先は野北町…」としっかり住所を伝え、笑顔でポーズをとってくれました。

 しかし条例の効果なのか、さすがに野北町の路肩などには空き缶はおろか、タバコの吸い殻ひとつ落ちていませんでした。「条例ができるまではイロイロとありましたが、マスコミなどで大きく取り上げられ、住民の“まちづくり”に対する意識が高まりました。結果的なのかもしれませんが、ゴミひとつ落ちていない野北になったことを職員として誇りに思っています」という林光君らしからぬ(いやぁ、彼の酒癖の悪さを知っているだけに…ははは)言葉に感銘を受けてしまいました。職員が誇れる、誇りをもって仕事ができる町、それを実現することはすごいことです。

 さて、9月は鹿山市の口瀬さんからの電話(代八市の山末君、結婚が決まってからノロ気話しかしない…という内容)をはじめ、内庄町の中出さんから「今回は裏広報を送ってくるのが遅い」という(裏広報はオマケです)お叱りの手紙。また賀遠町の草牛君からは「贈り物します」という手紙にヌード写真が同封(草牛君!君は何を考えて生きている)。また、美香町の中今さんからは「妹は独身です」という心打つお手紙。そのほか谷金町や松浜市など、福井大会で知り合った皆さんからお手紙をいただきました。もう少しヒマになったらリストを整理して広報交換を始めさせていただきます。

(平成5年10月号:ボツ版(下)に続く)

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