北海道、金沢、そしてデート…忙しいのう(2)

 ううっ…胸焼けと宿酔い…だが、朝は清々しい。昭和新山などを観光し、函館へと向かう。バスに日がな一日乗っての大移動。胸焼けを押して呑む麦酒とトイレ休憩で買い込むおつまみ。ゲップをしながらイクラ丼へと想いを馳せる。2年前、青函トンネルを渡り、お腹をグーグーいわせながら食べたイクラ丼の美味しさは忘れられない。できたらイカ素麺も食べたい。玄界灘のイカと種類は違うがコリコリと硬いイカも、いいもんである。(九州のイカもうまいぞ)「もう入らんばい」バスの中でウトウトとまどろみながら見る夢に何度も登場する。うっかり八兵衛以上のうっかり八兵衛ある。

 さて、函館山からの夜景を楽しみ、早速、宿へ。函館で一番いいという宿らしい。施設はいいが飯はマズイ。そんなことがあるはずない…旨い物ばかり食い過ぎて、すでに口が奢っているのである。「うまかったのはボタンエビの刺身くらいやったバイ」などと生意気なことを言っては、麦酒。お腹はパンパン。しかし部屋に戻れば、テーブルの上にまた麦酒。蒸したホタテが酒の肴。友人の龍田君は真っ赤になって眠っている。「ラーメンを食べに行こう」と誰かが言い出し、街へと出た。さっきまで寝ていた龍田君は急に元気になり、すでに着替えをして玄関に待っている。

 土産に買った池田ワイン。1本1,300円だったが、外の酒屋では1本1,000円で売っている。16本も買ったので4,800円の損になる。恵須町の広報担当、美人の澤長さんに知られなくてよかった。もし知られたら福井番外ツアーのときの珂那川町の志浦君と同じことを言われたに違いない。「泰平さん、泰平さん、さっき買ったワインと同じものが1本1,000円で売ってましたよ。300円×16本。4800円損しましたねェ。あ~あ、4,800円はもったいなかったなァ…惜しかったですねェ。アハハ…」(「広報かながわ裏版」より再現…今わかる、志浦君の気持ち)屈託なく笑われたら、余計にいらつくものです。

 ラーメンを食べに外出したのだが、酔っているので気分は大きい。泰平は、お金ならいくらでもあるぞとばかり「イクラ丼を食いに行こう」と提案。ラーメン組と丼ぶり組の二手に分かれた。さすがにこの期に及んでの丼ものは重いのか、大半はラーメン組に、丼組は私と兵地君の二人のみ。兵地君は来年1月に結婚が決まったということもあり、一日中ノロ気話をしていた。普通なら、人のノロ気話を聞くのは苦痛であるが、先月号に書いたように彼女ができた今は…余裕である。2人で寿司屋に入り、私はイクラ丼、兵地はトモエ丼を注文。奢った口で満腹時に胃に詰め込むイクラ丼は、美味しくなかった。

 さて、兵地君のノロ気話、それはそれは酷いものである。僕もノロ気話をしたくてウズウズしていましたが、まだ秘密にしている。裏広報も職場内には回していないのである。また、この「秘密」というのも、それはそれでうれしいのだ。「へ、へ、兵地君。彼女への土産は何を買ったとネ?」「うん、安物のオルゴールさ。お土産は心だもん。それより一番の土産は僕が無事に帰ることさ」「けっ、馬鹿たれが…」と心の中でつぶやく。「ふーん、ところでそんなノロ気話をして、少しも恥ずかしくないのかね?」「別に…これがノロ気話に聞こえるのは泰平ちゃんに彼女がいないからさ」「ううっ…」

 「泰平ちゃんはいいよね…彼女がいなくて。彼女がいると気を遣うんだぜ」「どんな?」「例えば、帰りの飛行機が堕ちたら彼女が泣いちゃうし…」「だから、どんな気を遣うんだ?」「飛行機が堕ちないように祈るとか…」「ほおお」(馬鹿たれが…)「泰平ちゃんはいいよね。死んでも親しか悲しまないから」彼女がいなくても死ぬのはイヤだ。「泰平ちゃんは何を買ったの?家族への土産」「カニとか鮭とか…」「さっきオルゴールを買ってたね」「うっ」(感づかれたか?秘密にしていたのに)「でも33歳の独身男が自分のためにそんなもの買うのはカッコ悪いよ。早く彼女を見つけなよ」(ふっふっふっふっ、馬鹿たれが…)

 彼のノロ気話は、3日間も続いた。宿に帰ると、誠嶋さんと河広さんがエッチなビデオを見ていた。2人とも1歳年上で、誠嶋さんは結婚が早く子どもも大きくなり親父になっている。方や河広さんは私より長く独身を貫いている。虚しいなァと思いつつ、長すぎる結婚生活と長すぎる独身生活の共通点を垣間見たような気がした。ということで、広報づくりの合間に出かけた同期の旅行であった。

(平成5年11月号(下)に続く)

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