11月13日と14日に広報セミナーに参加しました。

 東京で行われたこのセミナーは、ビデオ広報の研修です。前任がビデオ広報の導入を検討していた経過もあり、ケーブルテレビによる市町村広報が話題になっている昨今「この研修がいいだろう」と係長がチョイスしてくれたものです。出発日は12日「即位の礼」の日です。日本各地でテロ行為が起こっていることなどツユ知らず、空港での厳しいチェックを受けました。手荷物などは中まで検査され、花柄のパンツまでチェックされました。

 東京に出張するなどほとんどないので、預金をおろし、間違って夜の歌舞伎町に行ってしまったときのために備えました(うふふ、僕はえっちだョ)。しかし、ほとんどお金を使わずに済んだ、本当に意義のある(トホッ)セミナーでした。何しろ、宿泊先がHNKの研修施設「砧寮」で、門限はあるわ、部屋のテレビはHNKしか映らないわ、酒は飲めないわと厳しい規則。おまけに「明日の研修に備え、十分に休養を取りましょう」と書かれた張り紙が貼ってあるわ、もう大変、早々に寝るしかない。

 「上京できる」と浮足立っていた私は、セミナーの募集人数と具体的な研修内容を確認しておくべきだったと死ぬほど後悔しました。一般的な広報セミナーは座学が多く、大きな会場で講師が話し、数百人の広報担当者が受講するという「居眠り自由、抜け出し勝手のゆる~い研修会」と思い込んでいたのです。ところが受講者は32人。それを2クラスに分け、4~5人の受講生に1人の指導者がつくというハードな内容。しかも、指導者は「自然のアルバム」や「新日本紀行」などを手掛けてきたHNKのOB(職人)たち。

 おまけに、私はビデオカメラなど扱ったことがない、ズブの素人。その私が、プロ用の撮影機材を抱えて映像を取り、放送用の編集機材で1分間とはいえ番組を作るなんて……、地獄のような2日間でした。講師陣の指導に、汗は吹き出し、心臓は早鐘のように打ち。「はい」「すみません」「わかりました」「ありがとうございました」と返答も素直。真摯に研修に取り組まざるを得ないことになり、最前線の現場でフィルム時代から番組を築き上げてきたHNKの職人集団から、いろんなことを学ぶことができました。はいっ。

 苦悩の甲斐あって、他の自治体の広報マンとお友達になりました。特に、埼玉県宮大市の井新さんには帰郷した後にお電話までいただき「なんて優しい人なんだ」と、枕を涙でぬらしたものです。14日に研修が終わり。この井新さんに新宿まで送っていただき空港へ。終了時間が17時30分の研修でしたが、終わったのは18時。帰りの飛行機が飛び立つまで2時間しかありません。アセりにアセりまくって19時40分に空港に到着。

 空港に入ると「はあっ、はあっ」と息遣いの荒い私に警察官の声。「すみません、手荷物の中身を拝見させてください」とカバンを開け「これは何ですか?」と問い詰められる。「はあっ、はあっ、はき古しのパンツです。見ますか?」。「いや……結構です」。警察官も、異臭を放つ僕の花柄模様のパンツは見たくなかったようです。

 翌日の15日は出勤。11月11日に町長と町会議員選挙があり、現職の町長が落選していました。東京に研修に行っている間にいろいろあったようで、選挙の結果を受け、助役と教育長が辞任してしまい、大騒ぎになっていました。

 係長が「泰平よォ、退任のあいさつで、広報のページ数を2ページ増やすことになった」「それで、発行日が1週間先送りになった」と暗い顔で話してきました。ちなみに係長は根っから明るい性格で、暗い表情をするときは女性を口説くときと浮気がバレた時くらいのもの。きっと深刻な状況に違いないと確信しました。案の定、お偉いさんの原稿は遅れ気味、大変でした。(平成2年12月(下)に続く)

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