消防団の宴席Ⅰ…開始時にはすでに泥酔状態

 さて、先ほども書きましたが、前日は毘沙門町消防団で班長以上を対象とした水防訓練が行われました。ちなみに私、まんだら市の広報をつくる毘沙門町民。しかも波津地区の消防団の班長。この日はとても蒸し暑い日で、室内での人工呼吸や心臓マッサージの講習を受け、その後、野外で木流工法など3種類の訓練を行いました。もちろん全員が汗だく、喉はカラカラ「早くビールが飲みてえ」状態になりました。訓練が終わったのは午後4時過ぎ。「今日は、芥也の料亭で懇親会だ…末盧市の”卑弥呼“からコンパニオンも来るぞ…頑張れ」と励ます分団長の言葉に”ビール、コンパニオン“と全員の期待は高まります。

 しかし、お店の予約は6時半からということで、懇親会が始まるまでまだ2時間半もあるのです。もちろん、汗を流しに一度帰宅し出直してくればよいのですが、風呂に入って着替えてくるのも面倒だし、時間も中途半端。喉の渇きとコンパニオンの若いお姉さんが来るという話に、全員がやや高揚気味。結局、時間まで消防団の詰め所で何か飲んで時間をつぶすことになりました。もちろん、料亭での懇親会に予算をつぎ込んでいるので、ビールなんか買う余裕はありません。あるのは、冷蔵庫の氷と分団所有の焼酎(甲類)、そして焼酎用のライムの濃縮液だけ。

 機械班の団員が、倉庫から炊き出し用の大鍋を引っ張り出し、焼酎を4本入れ、氷とライム濃縮液を入れています。水で割るなんて頭にないようです。「えー、焼酎」と不平不満を言う団員もいましたが、意外と口当たりもよく、喉の渇きもあって、15人で6本の焼酎を空けてしまったのです。アルコール度数25度の焼酎を、何も食べずに一人あたり4合飲んだことになります。これから懇親会が始まるというのに、すでにみんな酔っ払っています。中には、すでに吐いている人もいます。頼りの分団長も、真っ赤になりベロベロになっています。

 6時過ぎ、出迎えのマイクロバスがやって来ました。毘沙門町の消防団は36歳の定年制で、班長たちはみんな30歳代半ば。まだまだ血気盛んな青年です。バスに乗り込むと、早速、数人の班長が大声でわめいています。これから懇親会が始まるというのに…。さて、バスは芥也に着きました。バスから転がり落ちるように飛び出し、真っ蒼な顔でもどすヤツ。ただただ大声を出すヤツ。魚が泳いでいる水槽に手を突っ込み魚を捕まえようとびしょ濡れになっているヤツ。もう無茶苦茶です。誰も注意する人はいません。消防団の天下です。そして、宴会が始まりました。

 「分団長、あいさつ」「ふふっ、えーっ今日は日曜日のお忙しい中…ヒクッ、班長各位におかれましては、朝からの救命訓練、そして午後からの水防訓練…。ど、どっ、どーもお疲れさまでございました。ふーっ。些少ではございますけれども、宴席を設けさせていただきましたァ。えー、本日は機械班の団員も参加しておりますので、ふふ、懇親を深めていただきますよう。えー、ヒクッ。よろしくお願い申し上げます。えーと、それから、2・3注意を申し上げたいと思います。本日は末蘆市の“卑弥呼”からコンパニオンが、えー、えー、えー」副分団長が小声で「よ、4人」

 「そう、4人来ておりますが、毎年のように手がつけられなくなり、女の子が泣き出してしまうという事案が発生しております。今回も、一度は“卑弥呼”からコンパニオンの派遣はできませんとお断りされております。そこを“おとなしくしますから”“変なことはしませんから”と頭を下げ、来ていただいております。消防団も、その品位が問われるご時世になってまいりました。来年のこともあります。女の子の胸を触ったり、背中に手を入れたり、むやみに担ぎ上げたりして女の子を泣かせたりすることがないよう、品位をもって、おとなしく騒いでいただきますよう、よろしくお願いします」

 今まで騒いでいた班長たちも静かに話を聞いています。しかし、この静けさもコンパニオンの登場で打ち消されました。コンパニオンは4人。1人は40歳くらいのおばさんで、最初から最後まで“中年好み”とウワサの副分団長の横に座らされていました。残りの3人は20歳のアルバイトで、そのうちの1人は非常に愛らしい顔をしたお嬢さん。H女学園大学に通う女子大生です。彼女たちは、消防団の宴席に出向くのは初めてということです。まるでオオカミの檻に迷い込んだウサギのようです。ちなみに一番カワイイ女の子は末蘆市の各務地区の人だとか(広報担当の業。ちゃんと情報を聞き出している)。

(平成5年7月号(参)に続く)

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